Studio Sinfonica
 
  EVENT

宮澤賢治の世界

日時 2004/7/25.26
会場 Studio Sinfonica(途上の家)

宮澤賢治の作品朗唱にあたって・・・・・・・・・ 川手鷹彦

宮澤賢治、全作品の朗唱については、2003年〜2004年正月にかけて構想が湧きました。 彼の作品(詩にしても童話にしても)は、それほど知られていないものの中にも素晴らしいものがあり、それを発表者・表現者の意図(作品を選んだり、並べ変えたりというようなこと)ではなく、原作者の思いがそのまま伝わる形で舞台に乗せることはできないどろうかと考えました。 これから、十数年はかかると思いますが、より多くの方々、賢治を愛し芸術を愛する人々に伝えたいと願っています。
今回、畠中さんの作品である《途上の家》、「スタジオ・シンフォニカ」と、いつも北海道では演奏してもらっている井上美豊子さんのピアノ演奏、そして私の朗唱、この3つの交響を楽しんでいただけたらと思います。

『春と修羅』

数多くの賢治作品の中でも最重要のひとつである『春と修羅』。
1922年、春を待ちわび、そしてその到来を歓ぶ、若き詩人のうたごえ。
大自然への畏れと愛情が、その天賦の才を通して、美しいことばに結晶されました。
現代における黙示録ともいうべき賢治の作品は、声に出し、音に響かせることで、よりその真価が発揮されます。
美しいことばとリズムは聞くものの心を沸き立たせます。
また、なぞ深い言葉で紡がれる模様は、ファンタジーを、あるいは銀河の無限の彼方にまで、あるいは修羅の闇の奥深くまで拡げます。


春と修羅:わずか37歳で早逝した宮澤賢治の初期の代表作。心象スケッチと副題がつけられており、1924年、賢治27歳の時に刊行され、生前に刊行された唯一の詩集でもある。]


『猫の事務所』

どうしてこの童話があまり紹介されないのだろう。不思議なくらい面白く、楽しく、また賢治らしい作品です。子どもも大人も大変楽しめますし、また大人には、人間性について少し反省させられるところもあるものです。


猫の事務所:停車場の近くに猫の第六事務所がありました。黒猫の事務長に白猫・とら猫・三毛猫・かま猫の書記官の四人が働いていました。ここはでは、猫の歴史と地理調べていて、猫たちの出生や行方を探します。かま猫(いつもかまどの中で寝ているのでススで汚れていました)は、みんなに溶け込もうとまじめに努力をしましたが、他の3匹の書記たちから嫌われ、なにかにつけて意地悪をされていました・・・
少しの違いを理由に仲間はずれにしたり、差別したりするおろかしさ。心に届け、かま猫の涙。みんな違っていたっていいんじゃないの。


スタジオ・シンフォニカから一言
2日間に渡る公演、おかげさまで無事終了いたしました。ご来場頂いた方々ありがとうございました。
朗唱という新しいジャンルの公演、大変エキサイティングでした。特に川手先生が途上の家の空間性を即座に理解して下さったことは本質的なコラボレーションになっていたと感じました。設計者として意図していなかった空間が氏の「動いたり叩いたり覗いたり」という行為によって現象する・・・本当に勉強になります。