Studio Sinfonica
 
  ARCHITECTURE

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顛末記 [収斂編 vol.1]

施工が始まってからは情報を共有化するために週一回のペースでオーナー+設計者+施工業者=三位一体運命共同体プロジェクトチームの定例会議を持つことに決め、早速現場では必要がなくなった部分の解体が始まりました。いざ解体してみると、30年前の施工ということもあり外周部に断熱材が入っていなかったりコンクリート躯体から信じられないもの(いわゆる服です、服!)が出て来たりと予期せぬことが何点かありましたが、伊藤所長の裁量で追加工事の発生を極力防いでいただきました。

実はこの現場に入ってからの追加工事というやつがとんでもない厄介物なのです。通常は不測の事態に対応できるように、仕上げのグレードを少し高めに設定しておくなどのかたちで余裕(前述の「現場での貯金」)を見ておくのですが、今回はその余裕がほとんどなかったので伊藤所長の魔法(という名の裁量)には本当に助けられました。また同時に我々の予想を遥かに超える問題に対しては、結果的に井上所長代理の打出の小槌(またの名を伝家の宝刀)を何度も振るって頂きました。自らの先読みの甘さを反省するとともに改めて深く感謝致します…礼。そのたびに拝見させて頂いた井上所長代理の遠い目は一生忘れることはできないでしょう。
さてとにかく暗い印象があったので前面サッシの一部取り替えと螺旋階段を採用した訳ですが、サッシ部分の雑壁(躯体ではない取り除いても問題のない壁のことです)を撤去し階段設置用の2.5m四方の穴を3階床に空けた瞬間の2階の明るさは特筆ものでした。仮囲い(建設中に立てる外部足場とシートなど)が障害物になっているにも関わらず、光は2階執務室の奥まで届いているという物理現象を超えて感じられる空間の開放性はまさに圧倒的。改修の場合新築と違ってもともとの建物のイメージの残余が強いので、その変化はドラマチック以外のなにものでもありません。(劇的ビフォーアフターという番組が「劇的」といわれる所以ですね)

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