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現場で具合が悪くなったのもこの頃で、奈穂子さん行き付けの整体師稲富先生を紹介して頂いたりしました。先生に「体を使う仕事をしてはいけない」と言われたことは大工の修行をしている身にとっては正直ショックでしたが、「自分の体の弱さを認識することで身体性を意識するというやり方もありなのでは?」と無理に意味付けしてしまう悪い癖によってなんとか乗り切りました。
さて問題の仕上材。材料はそのものの性質をストレートに表すのがベストという恩師(京都の田中先生)の教えに基づくポリシーをもっている私は、その旨をオーナーに理解して頂きながら選定を進めていきました。外装を特徴づけているアルミルーバーやサッシ、軒を構成する金属系の材料は着色を施さず素地のまま使用しました。 重要なのはメインの2階執務室。内部の螺旋階段は外部に合わせて錆止めの上に光を反射するメタリックシルバーの塗装を掛けて「鉄であること」と「光の変換装置であること」を強調しました。またトイレなどの機能空間を内包する光を奥に届ける円弧壁は、緩やかに表情を変えることを意図してシナ(白木)の竪張りとしました。実はこの円弧壁はもともと黄色の塗装に使用と思っていたのですが、作為的な空間になってしまうという判断から伊藤所長に無理を言って変更して頂きました(最敬礼)。 |